ある医師と面会した折の話

2011.12.16

ある日、一面識も無いお医者さんから電話で「私はどこどこの何々というものですが、ある所であなたのことを聞いたのでお電話したのです。今度すこし家をいじくりたいので、ご相談したいから……」と一度家まで来てほしいとのこと、先方の都合で夜でもゆっくりとの話なので、その二、三日後の夜おうかがいしました。初対面のあいさつ等の後、いろいろ増築や何かの相談をお受けしたあと、現在の住宅問題をめぐって雑談になって行きました。

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その時、そのお医者さんから次のような話が出ました。「私の今住んでいるこの家は、終戦直後大工さんにたのんで、なんでもかまわないから一応家族が一つの屋根の下に住めて、簡単な診察位できれば良いというつもりで、それでも当時の私たちとしては相当な金額を出して建てたのです。ちょうどその頃同業の人で家を新築したから見にきたまえというのがあったので、うかがって見せてもらいましたら、私のこの家よりずっと感じの良い、使い良さそうな家が私と同じほどの建築費でできているのです。聞いてみると知り合いの建築家に設計させて建てたのだとのことなのです。その時、つくづく私は建築家に設計をたのんで自分の家を新築しなかった事を残念に思いました。しかし考えてみると、現在では身近に建築客の知り合いでもある人は別として、一般の人々がそれこそかぎられたわずかな建築資金で小さなバラックのような家でも建てようなどと思う時には、建築家の存在などは無縁なものでは無いでしょうか。これは一般の人々の認識不足もさることながら建築家の怠慢では無いかと思います。